本記事では「代用有価証券」という仕組みと、それを使ったFX(外国為替保証金取引)での運用方法について紹介します。
FXの基本的な知識については、下記にまとめておきましたので、初心者の方はこちらからご覧いただくのがよいと思います。
「代用有価証券」って聞きなれない用語だと思いますが、SBI証券、マネーパートナーズ、auカブコム証券では、株式や投資信託を担保にすることで、FX証拠金を節約して、FXの取引ができます。
これを用いると、株式の売却差益(キャピタルゲイン/capital gain)や、配当金や優待の利益(インカムゲイン/income gain)に加えて、FXによる利益が期待できますので、株式をさらにお得に利用する裏技的な利用方法になります。
例えば、長期保有予定の優待株や、含み損が出て売るに売れない無配当の塩漬け株であっても、これを担保にしてFXで新たに収益機会を狙うことができます。
現物株をFXの証拠金にするしくみ:代用有価証券サービス
SBI証券、マネーパートナーズ、auカブコム証券いずれも、現物株式の評価額の70%をFXの元手(証拠金)としてと組み込むことができます。
このサービスによって、より効率的な資産運用が可能ということになります。
代用有価証券サービスがある証券会社の比較
下記は3社の特徴を比較した表になります(2021年3月25日現在)。
項目 | マネーパートナーズ | auカブコム証券 | SBI証券 |
担保率 | 70% | 70% | 70% |
担保に出来る有価証券 | 上場国内株式、ETF、REIT | 上場国内株式、ETF、REIT、投資信託 | 上場国内株式、ETF、REIT |
証拠金に充当の株式売却 | 可能 | 可能 | 可能 |
評価損への担保の充当 | 可能 | 可能 | 不可 |
FXの最低取引単位 | 1万通貨(パートナーズFX) | 1000通貨 | 1000通貨 |
FXのスプレッド | 0.3銭 | 0.2銭 | 0.1銭 |
担保率や担保に出来る有価証券など、代用有価証券サービスそのものは、各社ほぼ同じです。
担保率が70%ということは、仮に100万円の現物株があれば、株を運用しながら70万円分はFXの証拠金として使えるので、100万円+70万円分の投資が可能になります。
FXの方で比較すると、USD/JPYのスプレッドではSBI証券、最低取引単位では、SBI証券、auカブコム証券に軍配が上がります。
重要な概念:評価損に対して代用有価証券担保分を充当できるかどうか
先ほどの表で、さらっと書きましたが、一点だけ注意点があります。「評価損への担保の充当」という項目です。
つまり評価損に対して代用有価証券担保分を充当できるかどうかです。
難しい言葉を難しい言葉で言い換えられても・・・
大切なルールの違いなので、これから丁寧に説明しますね。
まず、FX運用中に必要な資金は大きく分けて二つあります。
② 保有しているポジション(建玉)の評価損(含み損)に耐えるための資金
たとえば、100万円の株(担保率70%)を持っていて、代用有価証券サービスで70万円、現金で30万円、合計100万円の証拠金を用意してFX取引を始めたとしましょう。
例えば、40万円の含み益が出ている場合は、40万円の利益を確定した場合には、実質証拠金は140万円(=70万円+30万円+40万円)となるので、70万円分の代用有価証券を維持したまま、確定益40万円を現金で受け取れることになります。
逆に40万円の含み損が出た場合を考えます。通常の考え方でいくと、実質証拠金は60万円(=70万円+30万円-40万円)になります。
マネーパートナーズ、auカブコム証券では、含み損の部分も代用有価証券担保分から充当できるので、特に問題ないのですが、SBI証券については、上記の「①ポジションに必要な証拠金」にしか充当できないルールなので、含み損となる部分は現金で預け入れた30万円の範囲内で補うしかなく、含み損が40万円あるという状態は「10万円の現金不足」と判定されるため
・株を売却して得た現金から相殺
のいずれかで、現金不足状態を解消する必要があります。
SBI証券では、上記のような現金不足状態に陥っても、すぐに強制措置が取られるわけではなく、下記の図(SBI証券のWebサイトより引用)のように、最短でも約1か月半は現金不足状態のまま運用することも可能ですが、ルールをきちんと理解しておくことが必要です。
代用有価証券サービスのリスク
では、マネーパートナーズかauカブコム証券で代用有価証券サービスを使ってFX運用すれば、現金と同様に考えられるので安全ということですね?
代用有価証券サービスを使うFX運用も良いことばかりではありません。次に説明します。
リスクが大きくなりすぎる
当たり前なのですが、株式投資のリスクとFX投資によるリスクをダブルで負うことになります。
仮に株価が半値になれば、代用有価証券分の証拠金額も半額になるので、FX分の含み損も重なると、一気に六カットというともあり得ますので、二重の投資リスクを負っていることを意識して、十分にリスク管理することが重要になってきます。
私のケース
上記で、SBI証券については、代用有価証券サービスに一部制限があることを説明しましたが、私自身は、取引ルールを理解した上で、SBI証券で代用有価証券を担保にしたFX運用を行っています。
本日時点での私のSBI証券でのFX口座の状況は以下のとおりです。
代用有価証券評価額:2,244,165円に対して、 保有しているポジションの証拠金:531,503円、また、現金余力:304,879円に対して、含み損益:-20,950円ですので、「①ポジションに必要な証拠金」「②保有しているポジションの含み損に耐えるための現金」ともに十分に余裕をもって運用していますが、それでも最近1か月の確定利益は下記の通り6万円を超えていますので、代用有価証券サービスを活用したFX運用が、私自身の資産形成に役立っているかをご理解いただけるのではないでしょうか。
まとめ
代用有価証券サービスを活用したFXでの投資方法について解説しました。リスク管理については、注意が必要ですが、投資資金の効率的活用という観点で、私は積極的に活用する価値があると考えています。
私自身は、この仕組みを組み込んだ投資エコシステムを構築して、安定的な投資成果が出せるようになりました。そのエコシステムについての話は、また別の機会に記事にしたいと思います。
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